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三ツ井 誠一郎
金属, 93(3), p.211 - 218, 2023/03
地層処分研究開発の一環として、地層処分で想定される現象に類似した、天然類似現象(ナチュラルアナログ)を対象とする研究、「ナチュラルアナログ研究」が実施され、地層処分で想定される現象の予測モデルの概念や評価手法の妥当性の検証に利用されている。日本原子力研究開発機構が実施してきた金属製遺物を対象としたナチュラルアナログ研究の成果を通じ、出土金属製遺物から得られる知見を地層処分研究開発にどのように活用しているかを紹介する。
柳田 明進*; 浦 蓉子*; 三ツ井 誠一郎; 石寺 孝充; 川喜田 竜平
奈良文化財研究所創立70周年記念論文集; 文化財論叢,5, p.843 - 856, 2023/03
鉄製遺物内部への塩化物塩の集積の有無とその要因を検討するため、平城宮・京より出土した3点の鉄製遺物に対して、蛍光X線分析による元素マップ、微小部X線回折分析、X線CTによる非破壊分析を実施した。さらに、既報の平城宮跡の環境調査結果に基づき、鉄製遺物の埋蔵環境を推定した。その結果、3点は、(1)酸化的な環境に埋没していたと推定され、針鉄鉱/磁鉄鉱の腐食層を有し、内部に赤金鉱が生成した鉄製遺物、(2)酸化的な環境に埋没していたと推定され、内部の金属鉄が溶出し、針鉄鉱のみの腐食層が形成された鉄製遺物、(3)還元的な環境に埋没していたと推定され、菱鉄鉱を含む腐食層が形成された鉄製遺物、であることが認められた。このうち、塩化物塩の集積が確認された鉄製遺物は(1)のみであった。平城宮跡の水質観測孔におけるCl濃度は観測点によって顕著な差異は認められないことから、Cl濃度以外の環境因子が塩化物塩の集積に影響を及ぼしていることが認められた。塩化物塩の集積は、針鉄鉱/磁鉄鉱からなる腐食層が形成されたことでアノードとカソードが分離し、局部腐食が生じたことが要因である可能性が考えられた。